株式交換2年後の事業縮小と適格性・時価評価課税
原則として、再編時点で適格要件を満たしていれば、その後の事情変更で遡って非適格とはならない。
まず適格要件は資本関係で3類型に分かれ、従業者引継・事業継続要件が課されるのは支配関係(50%超100%未満)型と共同事業型のみ。完全支配関係(100%)型では課されないため、事業縮小が適格性を直接崩す論点になりにくい。
適格判定は効力発生時の「見込み」で判断し、効力発生後の事情変更は原則遡及しない。問題となるのは、当初から統合・縮小が織り込まれていたと評価されるケースで、この場合は「当初から継続見込みがなかった=当初非適格」と構成され、包括的租税回避防止規定(法法132の2)の適用も検討され得る。
非適格となると原則、完全子法人の一定資産が時価評価課税の対象(法法62の9)。ただし株式交換後も完全支配関係が継続する場合は時価評価の対象外。したがって完全子会社化事案では、非適格でも完全支配関係が続く限り子会社資産の時価評価課税は生じない。
判定基準時は再編時点であり、機械的に遡及して非適格となることはない。
従業者引継・事業継続要件が課されるのは②支配関係型・③共同事業型のみで、①完全支配関係型なら金銭等不交付と完全支配関係の継続見込みが中心。設問は②③前提として論じる。
適格判定は効力発生時の見込みで行う(法法2十二の十七、法令4の3)。その後の経済環境変化や経営判断による縮小で遡及非適格とはならないが、当初から2年後の縮小が計画に織り込まれていた場合は「継続見込みがなかった」として遡及リスクがある。要件を形式的に満たすだけならヤフー事件最判の枠組みで法法132の2による否認も検討対象。防御の要は再編時点の取締役会資料・事業計画での時系列疎明。
非適格株式交換等では原則、完全子法人の一定資産に時価評価損益(法法62の9)。しかしグループ法人税制導入以降、株式交換直前に完全支配関係がある法人間の株式交換等は時価評価対象から除外。「非適格=直ちに時価評価課税」ではなく資本関係次第で結論が変わるのが急所。
功労金・退職慰労金の分割支給と退職所得控除
分割支給でも一時金性を保てば退職所得に該当し、退職所得控除は支給総額に適用できる。
功労金という名称でも退職に基因すれば退職手当等に含まれる(所法30)。資金繰り等の合理的理由による分割は退職所得性を失わせず、控除は勤続年数ベースで総額に一度だけ計算。2回目以降は前回までと通算して源泉徴収を精算。
給与認定リスクの基準:退職が名目のみで実質勤務が続く、退職時に総額が確定していない、分割が長期・多数で報酬後払い・年金的、名目が都度変遷、など。
分掌変更(所基通9-2-32)を機とする功労金は、分割だと打切支給の一時性が崩れやすく給与認定リスクが特に高い点に注意。
総額が確定的に決議され合理的理由で分割するにすぎなければ、各支給分とも退職所得。
退職所得は退職により一時に受ける給与およびその性質を有する給与(所法30)。控除は勤続年数に基づき総額に一度計算。法人側でも分割支給の都度損金経理が一定条件下で可(法基通9-2-28ただし書の実務運用)。
認定基準は突き詰めると「退職の事実があるか」「支給額が退職時に一時金として確定しているか」の二点。名ばかり退任、後からの積み増し、年金的な長期分割、名目の変遷が退職所得性を弱める。
分掌変更打切支給(所基通9-2-32)は通達が未払計上を原則認めない関係で分割が疑義を招きやすい。防衛策として、退職実態の資料化・総額と分割日程の決議確定・分割理由の議事録化・支給は2〜3年以内に短期化を提示。
高額特定資産「3年縛り」の起算点
起算点は引渡日ではなく、仕入れ等を行った課税期間の初日。そこから3年は免税・簡易課税不可。
税抜1,000万円以上の棚卸資産・調整対象固定資産を本則課税で仕入れた課税期間の初日を起算日に、当期+翌期+翌々期は移行不可(消法12の4、37③)。判定は課税期間単位。
自己建設高額特定資産は、建設等費用の累計が税抜1,000万円以上となった場合に該当。3年縛りの起算点は「建設等が完了した日の属する課税期間の初日」。建設中は縛りが生じず、完成期初日から3年。
縛り期間中に簡易課税選択届を出しても無効なので、経過後に改めて届出が必要。
起算点は仕入れ等を行った日の属する課税期間の初日。仕入期+翌期+翌々期は本則課税に固定。
本則課税で高額特定資産を仕入れた場合、その課税期間の初日から3年、免税点制度(消法12の4)と簡易課税選択届(消法37③)が制限。引渡日はどの課税期間に属するかを決める要素にすぎない。
自己建設は構造がやや複雑。制限期間は「費用累計が1,000万円以上となった日の属する課税期間の初日」から始まり、「建設等が完了した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日」まで続く。着工後に費用が達した期からすでに縛りが開始し、終期は完成期基準で延びるため、建設が長いほど全体が長期化。「完成してから3年」とだけ覚えると誤解する落とし穴。
棚卸調整(消法36)適用資産や居住用賃貸建物の控除制限(消法30⑩)の重畳も要確認。
代表権維持のまま実権を委譲した場合の打切リスク
中核要件は後継者が代表権を有していることと株式の継続保有。給与減額それ自体は打切事由ではない。
特例経営承継期間(5年)の主要件は、代表権保持、対象株式の継続保有、資産管理会社非該当・事業実態の維持。雇用確保要件は特例で緩和され、8割割れでも報告で継続可。
確定(打切)事由は法定列挙(代表権喪失、株式譲渡、解散、資産管理会社化 等)。給与の多寡や業務執行を従業員に委ねること自体は列挙事由ではないため、代表権保持中は直ちに打切りとならない。
ただし代表取締役を退任すれば即該当。形式のみの代表で承継実態がない極端な事案は否認・調査リスクが残る。期間経過後は要件緩和。
打切りは法定の確定事由該当時のみ。給与減額は確定事由ではない。
確定事由の核は、代表権を有しないこととなった場合(要介護・障害等のやむを得ない事由を除く)、株式の譲渡・贈与、解散、資産保有型/運用型会社該当、総収入ゼロ、資本金等の減少など(措法70の7の5)。雇用確保要件も報告+認定支援機関の指導で継続可。
よって代表権を保持したまま給与減額・実務を従業員に委ねる事実だけでは打切事由に該当しない。
留意点は三つ。①分水嶺は代表権の有無で、退任や代表権の制限が付けば即該当。②年次報告(都道府県)・継続届出(税務署)の懈怠自体が打切事由で体制変更時に失念事故が多い。③代表が完全に名目化し承継実態がなければ認定取消し・調査リスク。重要事項の意思決定に後継者が代表として関与し続ける記録が安全策。
「同居」の実態判定と、名義預金・生前贈与加算の切り分け
同居は住民票でなく生活の実態で判定。一時的に住民票を移していても実態が同居なら適用可。
重視される事実:起居寝食の場所、生活費・光熱費の負担、家財の所在、居住日数、住民票を移した理由の合理性。住民票の一時移動は不利な間接事実だが、居住実態を疎明できれば適用可能。家なき子特例の可否も併検討。
名義預金と生前贈与加算は「贈与が成立しているか否か」で峻別。成立していれば相続開始前7年以内(令和5年度改正、2024年1月以降段階適用、延長4年分は総額100万円まで除外)の贈与が加算対象で贈与税額控除。成立していなければ名義預金=相続財産そのもので、期間制限は無関係。
判定要素:原資の拠出者、通帳・印鑑・カードの管理支配、贈与契約の実在、自由な使用収益。手順は口座ごとに贈与成立を判定→不成立は全額計上、成立は7年内加算の要否判定。
同居該当性は生活の本拠が被相続人宅にあったかで判定。住民票は有力な間接資料にすぎない。
納税者側は起居寝食の場所、家財・衣類の所在、光熱費使用量と負担、郵便物受取、勤務先届出住所、住民票を移した理由を積み上げれば適用可。住民票だけ同一の形だけの同居は否認。移転先に持ち家がある等は家なき子特例(別居親族)の可否にも影響。
切り分けは「贈与契約が有効に成立していたか」の一点に帰着。贈与は諾成契約で贈与意思+受諾+支配の移転が必要。原資拠出・通帳印鑑カード管理が被相続人で名義人が存在すら知らなければ贈与不成立=名義預金=本来の相続財産で、何十年前でも取り込まれ7年は無関係。成立していれば相続開始前7年以内(完全な7年加算は2031年開始の相続から。延長4年分は合計100万円まで除外)が加算対象。
二段階手順:(1)原資・管理支配・契約/申告/費消で贈与成立を判定、(2)不成立=全額計上、成立=贈与時期特定→7年内加算と経過措置を当てはめ。相続時精算課税の贈与は期間問わず精算対象で混同注意。
非永住者と海外信託・送金課税・国外財産調書
受益者課税→送金課税→調書義務の3段階で整理する。
日本の信託税制は受益者等課税が原則で、受益者(みなし受益者含む)に信託財産・収益が帰属(所法13)。海外グランタートラストもこのフィルターで判定。
非永住者は国内源泉所得の全部+国外源泉所得のうち国内払い・国外送金分が課税(所法7①二)。信託収益が国外源泉なら送金分に限り課税。源泉地は所得の種類ごとに判定するため「信託だから全部国外源泉」とは即断できない。
国外財産調書の提出義務者は「非永住者以外の居住者」なので、非永住者はCRSで把握されても調書義務は生じない。ただし非永住者でなくなれば義務発生。調書義務と送金課税は別問題。
帰属(所法13)・源泉地(所法95)・課税範囲(所法7)は別個の判定である、というのが核心。
第一層:信託の性質決定。受益者等課税が原則で、みなし受益者を含む受益者に帰属(所法13)。外国信託も日本の課税上この枠組みで性質決定し直し、委託者兼実質支配者が受益者等ならパススルー(透明体)で課税。
第二層:課税範囲。非永住者は国内源泉所得の全部+国外源泉所得の国内払い・送金分(所法7①二)。源泉地は器でなく原資産の所得の種類ごとに判定(所法95④)。みなし受益者課税は「帰属」を決めるルールで「源泉地」を国内化しないため、国内源泉と同様に全額課税とはならない。国内でのカード決済を国外資金で精算する等も送金に含まれ得る。
第三層:調書。提出義務者は「非永住者以外の居住者」。非永住者期間中はCRSで把握されても調書義務そのものが生じない。ただし非永住者でなくなる年から義務発生、義務の有無と所得課税は別、CRSは課税漏れの端緒として活用、財産債務調書は別建て判定。